[参考] 適切な意思決定支援に関する指針

１．基本方針
人生の最終段階を迎えた患者さん・ご家族様に対し、医師をはじめとする医療・ケアチーム(以下「医療・ケアチーム」とする)が、最善の医療・ケアを提供するため、患者さん・ご家族様に対し適切な説明と話し合いを行い、本人の意思決定を基本とした医療・ケアを提供します。

２．『人生の最終段階』の定義
『人生の最終段階』とは、以下の三つの要件を中心に、医療・ケアチームが判断します。
（1）医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること
（2）患者さんが意識や判断力を失った場合を除き、患者さん・ご家族様・医師・看護師等の関係者が納得すること
（3）患者さん・ご家族様・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること

３．人生の最終段階における医療・ケアの在り方
（1）医師等から適切な情報提供と説明がなされ、それに基づき多職種からなる医療・ケアチームが十分に情報共有し、本人の意思決定を基に医療・ケアを提供します。
（2）時間の経過、病状の変化等で本人の意思は変化しうることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し伝えることができるような支援が求められることから、ご家族様を含めて必要な時に話し合いを行います。
（3）本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、ご家族様など信頼できる方も含めて本人との話し合いを行います。
（4）医療・ケアの開始・不開始、医療・ケアの内容の変更、中止等は医療・ケアチームにより、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断します。
（5）医療ケアチームにより可能な限り疼痛やその他の不快な症状を緩和し、本人の身体的な苦痛のみならず、ご家族様も含めた精神的・社会的な援助を総合的に行います。
（6）生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、本指針の対象としません。

４．人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続き
（1）時期については、人生の最終段階であると医師・看護師および、本人・ご家族様が判断するものとします。意思決定支援にあたっては、医師等は本人の状態に応じた病状説明を行い、本人、ご家族様、医療・ケアチームにて情報を共有します。
（2）方針の決定
① 本人の意思が確認できる場合
本人・ご家族様と医療・ケアチームとの十分な話し合いを行い、本人の意思決定を基本とした医療・ケアの方針を決めます。
② 本人の意思が確認できない場合や判断能力がない場合
ご家族様が本人の意思を推定し、その推定した意思を尊重し、医療・ケアチームで方針を決定します。
ご家族様が本人の意思を推定できない場合は、本人にとって何が最善であるか、医療・ケアチームとご家族様で繰り返し話し合います。ご家族様がいない場合およびご家族様が判断を医療・ケアチームに委ねる場合は、本人にとっての最善の方針を繰り返し話し合い決定します。
③ 医療・ケアチームは、医師・看護師・ケアマネジャーなどの在宅療養支援者から構成されます。
④このお話し合いで決定した方針は、その都度、診療録に記載します。
④ 意思決定は、本人の意思に反して強制されるものではありません。

５．外部専門家の助言について
医療・ケアチームで医療・ケアの方針が決定できない場合は、本人またはご家族様の同意を得たうえで、外部の専門家（医療倫理の精通者や国が行う研修会の修了者、地域医師会の有識者など）に助言を仰ぐなどして、方針について検討していきます。
①医療・ケアチームの中で、本人の病態等により医療・ケア内容の決定が困難な場合
②本人・ご家族様との話し合いの中で、妥当な医療・ケア内容の合意が得られない場合
③ご家族様の中で意見がまとまらない場合や、医療・ケアチーム事者との話し合いで、妥当な医療・ケア内容の合意が得られない場合

2022年9月　すこやか在宅クリニック　院長　辻本健児